4. プロの仕事人、薪を入れる

窯の周りには、160束もの薪があちこちに積まれている。
ひとつひとつの薪の束をほどき、窯に入れる準備をする。

少し水分を含んでしまった薪があれば、窯の上に乗せて
乾燥させる。


私はこの場の神聖さを何から感じたのだろう、
もちろん窯焚きという工程にもあるけれど、
薪を入れるタイミング、窯の中の温度、薪の量、
寸分の無駄もない動きの中で、
真鍮に窯と炎と器と・・に向き合い続ける人が目の前にいる。

私は薪を入れる彼の側に、なかなか近寄ることができなかった。

それは私が勝手に近寄れなかっただけであって、
彼は特に気にもせず、気さくに話してくれたり私が居ても
嫌な顔ひとつせず特上の笑顔で迎えてくれる。
ただその動作ひとつひとつは、美しい動作の連続だ。

それでも、薪を入れて次に薪を入れるまでの数分間に、
お茶なんか入れてくれて最高のおもてなしもしてくれる。

彼の心や目や身体、そしてその動作や心、彼の全てが
とてつもなく大きなパワー、集中力と情熱、ひたむきさを
山全体パワーに劣らず包み込むように大きく光っていた。

ここは男の仕事人(プロ)の神聖な職場に違いない。
そう思った。
本当のプロの仕事というものは、こういうものなのかと・・、
ただ圧倒されて途方もなく惚れた。

こういう神々しい職人さんは日本にたくさんいるのだ、
そう思うと心躍った。出会いにひたすら感謝するのみ